熟年夫婦が互いの「これからやりたいこと」を心地よく語り合うヒント
熟年期に改めて「やりたいこと」を語り合うこと
子育てが一段落し、夫婦二人の時間が増えてくると、これからの人生について考える機会が増えるかもしれません。長年連れ添った配偶者だからこそ、改めて「自分がこれから何をしたいのか」「どんなことに興味があるのか」といった個人的な夢や目標について話すのは、少し気恥ずかしかったり、あるいは話しても理解してもらえないのではないかと感じたりすることもあるかもしれません。
しかし、熟年期だからこそ、互いの個人的な「やりたいこと」を語り合い、応援し合うことは、夫婦関係に新たな風を吹き込み、それぞれの人生をより豊かにするために大切な要素となり得ます。この記事では、熟年夫婦が互いの「これからやりたいこと」について、心地よく尊重し合いながら語り合うためのコミュニケーションのヒントをご紹介します。
なぜ今、互いの「やりたいこと」を語り合うことが大切なのか
人生の後半は、それまでの役割や責任から少し解放され、自分自身の内面や興味に改めて目を向けることができる時期でもあります。この時期に、夫婦それぞれが個人の充足感を追求することは、お互いが自立した個人として輝き続け、結果として夫婦関係全体の活性化にも繋がります。
互いの「やりたいこと」を知ることは、単なる情報の共有にとどまりません。それは、相手の価値観や内面への深い理解を促し、新たな共通の話題や応援し合える目標を生み出す可能性を秘めています。長年の関係で固定化されがちな会話に、新鮮な視点をもたらすことにも繋がるでしょう。
語り始めるための穏やかな一歩
「何か新しいことを始めたい」「昔から興味があった〇〇をやってみたい」といった漠然とした気持ちでも構いません。まずは、そのような考えが自分の中に芽生えていることを、穏やかな言葉で伝えてみることが第一歩となります。
例えば、「最近、昔から興味のあった〇〇について考える時間が増えたんです」といったように、現在の自分の心境を伝えることから始めてみます。相手に何かを求めるのではなく、あくまで自分の内側で起きている変化を共有する、というスタンスが大切です。
相手から話を聞き出す場合も、問い詰めるのではなく、「最近、何か新しく興味を持っていることはありますか?」「これからやってみたいと思っていることなどありますか?」といった、柔らかく開かれた問いかけを心がけることが有効です。相手に話す準備ができていないようであれば、無理強いせず、その気持ちを尊重します。
相手の「やりたいこと」を聴く姿勢
相手が自分の「やりたいこと」について話してくれた時には、評価や否定をせず、ただ耳を傾ける姿勢が非常に重要です。たとえ自分の理解や価値観と異なる内容であっても、「なぜそう思うのか」「どんなことをしてみたいのか」といった相手の気持ちや考えに寄り添うように聴きます。
相槌を打ったり、「なるほど」「そうなんですね」といった共感を示す言葉を挟んだりすることで、相手は安心して話を続けることができます。また、「それはどんな点が面白そうだと感じますか?」のように、相手の興味の源泉に焦点を当てた質問は、話を深めるのに役立ちます。大切なのは、相手の夢や目標を「応援すべきもの」として受け止めようとする気持ちです。
自分の「やりたいこと」を心地よく伝える
自分の「やりたいこと」を話す際には、具体的なイメージを伝えることに加えて、「なぜそれをしたいのか」という動機や背景を添えると、相手はより深く理解しやすくなります。「昔からの憧れだった」「健康のために」「新しいスキルを身につけたい」など、素直な気持ちを伝えます。
また、もしその「やりたいこと」に対して不安や迷いがあるならば、それも含めて正直に話すことも、相手との信頼関係を深めることに繋がります。「やってみたい気持ちはあるけれど、うまくできるか心配で」といったように、自分の内面を共有することで、相手はどのように支えれば良いか考えやすくなります。
互いを応援し合う具体的なステップ
互いの「やりたいこと」を語り合えたら、次はそれをどのように応援し合えるかを話し合います。これは、単に「頑張って」と言うだけではありません。相手がその目標に向かうために、具体的にどんなサポートがあれば嬉しいかを話し合う機会を持つことが大切です。
例えば、「〇〇を学ぶための時間を作りたい」「必要な道具を揃えたい」「一緒に情報収集してほしい」など、具体的な要望があるかもしれません。全ての要望に応えることが難しくても、可能な範囲で物理的なサポート(時間や費用の調整、情報収集など)や、精神的なサポート(励ましの言葉、共感、ねぎらい)を提供することで、相手は「応援されている」と感じることができます。
応援は一方的なものではありません。自分が応援してもらうことで、相手の「やりたいこと」も応援したいという気持ちが自然に生まれることもあります。
価値観の違いがあった場合
互いの「やりたいこと」が、これまでの夫婦のライフスタイルや価値観とは大きく異なる場合もあるかもしれません。すぐに賛成したり、理解を示したりすることが難しいと感じることもあるでしょう。
そのような時は、無理に同意しようとせず、「すぐにはピンと来ないかもしれないけれど、あなたが真剣に考えていることは理解しました」「もう少し詳しく聞かせてもらえる?」といったように、相手の気持ちや考えを尊重する姿勢を示すことが大切です。すぐに解決策を見つけようとするのではなく、対話の機会として捉え、時間をかけて話し合っていく姿勢が、お互いを傷つけずに前に進むための鍵となります。
小さなことから始める
「壮大な夢なんてない」「特にこれといってやりたいことは見つからない」という方もいらっしゃるかもしれません。それでも構いません。まずは、日々の生活の中での小さな楽しみや、少し興味があることについて共有することから始めることも有効です。
「最近、この本が面白かった」「テレビで見たあの場所に行ってみたいな」「昔習っていた〇〇をまたやってみようかな」といった、些細なことから話してみてはいかがでしょうか。このような小さな共有も、夫婦間のコミュニケーションを豊かにし、互いの内面を知る大切な一歩となります。
まとめ
熟年期に互いの「これからやりたいこと」を語り合い、応援し合うことは、夫婦それぞれが自分らしく輝き、そして共にいる時間をより豊かなものにするための素晴らしい機会です。完璧な答えや壮大な計画がなくても、まずは穏やかな問いかけや、相手の話をただ聴くことから始めてみてください。
互いの内面を尊重し合い、小さな一歩を応援し合うこと。そのプロセス自体が、長年連れ添った夫婦だからこそ育める、新たな絆や深い理解に繋がっていくことでしょう。焦らず、お互いのペースを大切にしながら、心地よい対話を重ねていくことを願っています。